割れやねじれが少ない4面背割り  

現代工法にマッチした材

4面背割り材を開発したきっかけは、2年前の東海豪雨。2〜3日間振り続いた雨で異常な湿度にみまわれ、その後の乾燥過程で、東濃ヒノキのムク材(人口乾燥材)を柱に使った新築現場は「柱の背割れ部が開いてプラスターボード下地が6oうごいて、クロスが波打ってしまった」(欧倫ホーム・長谷川直子さん)という。
 同社は、「乾燥材でも条件によっては狂うことを再確認した」というが、だからといって大手住宅メーカーのように集成材に方向転換しなかった。それは「施主がヒノキに望んでいるのは香り。やっぱり本物(ムク)でないと香りがない」(尾崎真平欧倫ホーム社長)と考えたからだ。
 現代の住宅工法にマッチした、狂わないムク材を開発できないか。尾崎社長は岩崎木材に相談、そこで考案されたのが「4面背割り」材。
 乾燥する前に4面のタテ方向に深さ12〜15oの浅い切溝(モルダー加工による背割り)を入れる。この材を人口乾燥する。乾燥は4箇所の溝から木材の熱が逃げやすく、「従来の半分の時間で含水率が下がる」(高知県立森林技術センター調べ)という。
 また、「表面乾燥に伴って発生する表層部の引っ張り力が4面の切溝で減衰し背割り部の広がりを少なくすることができる」(開発者の岩崎木材・平田正一さん)。
 強度も高い。ヒノキ4寸角を用いて従来の背割り材と比較したところ「曲げ強さは20%アップ。人口乾燥後のヤング係数も平均20%程度高くなった」(愛知県工業技術センター調べ)という。
 この結果を踏まえ現在は、スギ、ヒノキだけでなく、ねじれやすいカラマツ(北海道)についても実験・調査を行っている。105角、120角の4面背割り柱(人口乾燥KD材)を屋外外気にさらしたところ「1ヶ月たって20本のうち、ねじれたものは1本もなかった」(佐々木国雄氏・佐々木木材防腐且ミ長)。この実験は今後も引き続き行い、カラマツなど国産材への可能性も探っていく。